映画『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』貧しさの負の連鎖 格差社会の実態を描いた作品

かつて製鉄業で栄たオハイオ州の小さな町。しかしその町はやがて製鉄業が廃れてしまうと、町全体も寂れてしまいます。そんな寂れた町で時代の波に流されてしまった母親のもとで育った少年J・D。大人になった彼はこの町を離れて自分の人生を歩み始めますが、ある時町に戻ってきたことで彼は自分の幼い頃の体験を思い出しました。そのJ・Dの振り返る過去がラストベルトと呼ばれる地帯の実態なのです。

目次

『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』作品情報

タイトル ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌(Hillbilly Elegy)
監督 ロン・ハワード
公開 2020年11月24日
製作国 アメリカ
時間 1時間56分

Rotten Tomatoes

あらすじ

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オハイオ州南部出身の元海兵隊員で、現在はイェール大学ロースクールの学生であるJ・D・ヴァンス は、夢の実現を目前にして、心の奥に追いやった田舎の家族のもとに帰郷せざるを得なくなる。

アパラチア山脈の町で彼を待ち受けているのは、薬物依存症に苦しむ母親ベヴ との確執をはじめとする複雑な家族模様。

彼を育ててくれた、快活で頭の切れる祖母マモーウ との思い出に支えられ、ヴァンスは己の人生を歩んでいくために、消すことのできない家族の歴史を次第に受け入れ始める…。

(出典:https://www.youtube.com/watch?v=I425ysqm0m8&t=1s)

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ヒルビリー

山に住む人の意味だったヒルビリー(Hillbilly)。
アパラチア山脈に住む人々をヒルビリーと呼んでいましたが、今ではその言葉は社会に取り残された貧しい白人達のことを指す言葉になってしまいました。

映画『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』のでJ・Dの祖母達が住んでいたケンタッキー州もヒルビリーの人が住んでいるとされるアパラチア山脈の南側に位置します。

J・Dの祖母達はそのヒルビリーを離れてオハイオ州にやってきます。
オハイオ州もアパラチア山脈の南に位置する州です。

映画の中でJ・Dの出身地を聞いた人が「無学の田舎者(レッドネック)」と馬鹿にしていましたが、ヒルビリーの人はアメリカ国内でそんな風に思われているのです。

そして実際J・Dの暮らしたオハイオ州のミドルタウンでは、貧しいあまりに道を踏み外してしまう人がたくさんいました。
J・Dの母親はまさに誰にも助けてもらえずに、人生を壊してしまった1人だったのです。

寂れた地帯(ラストベルト)

J・Dが育ったオハイオ州ミドルタウンはかつては製鉄業で栄た町でした。
J・Dの祖父母はケンタッキー州を離れこの土地にやってきますが、2人がやってきた頃はとても賑わっていた町です。

祖父は製鉄所で働き始めますが、この地域は近くに五大湖があり製造業や工業などに適した土地で戦後アメリカの製造業を支えていた場所でした。

しかしやがて自由貿易により、賃金の安い海外で製造する会社が増え、この周辺の土地の製造業は寂れてしまいます。
それと同時にこの地域に住む人たちも仕事を失い、貧しい暮らしを余儀なくされたのです。
現在ではこの辺りの土地はラストベルト(錆びた地帯)と呼ばれている土地になってしまいました。

J・Dの祖父母もそんな時代を経験した当事者達です。
13歳で娘を妊娠したJ・Dの母親は必死で娘ベブ達を育てますが、仕事を失った父親はお酒に溺れ暴力を振るうようになってしまったのです。

そんな幼い頃を過ごしたベブもまた、この町に人生を狂わされてしまいました。
シングルマザーで子供2人を育てるベブでしたが、彼女もその貧しさや恋愛からやがて薬に手を出してしまったのです。

何度も立ち直ろうとしたベブでしたが、周囲は町は国は彼女を助けてくれませんでした。
社会に取り残されてしまったベブは、もがきながらもその波にのまれ這い上がれなかったのです。

ベブに育てられたJ・Dは祖母から「チャンスを得るためには勉強しろ」と教わります。
自分や母親がたどった道とは違う、「自分の人生を自分で決めること」を教わりました。

逆に言えば彼女達は時代の波ののまれ、自分の道を選べないまま歳を重ねてしまったのです。

祖母は孫にそんな風になって欲しくなくて、「自分の道は自分で決める」ということを伝えたのでした。

まとめ

ラストベルト、ヒルビリーとアメリカの貧しい白人社会を描いた作品『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』。

貧しさが人生の全てを壊してしまう現実、貧しさがもたらす薬物や暴力の現実などこの地域で現実に起きていることが描かれた作品になっていました。

アメリカの抱える闇、そして格差の現実を訴えかけているのが『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』です。

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