1862年のシャム王国。王様は近代国家との間にできた壁に違和感を感じながらも悩んでいます。そんな王様の元にイギリスからやてきた家庭教師のアンナ。彼女は王様にひるむことなく立ち向かい、彼の心を少しずつ溶かしていったのでした。
『王様と私』作品情報
タイトル | 王様と私(The King and I) |
監督 | ウォルター・ラング |
公開 | 1956年10月26日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 2時間13分 |
Rotten Tomatoes
『王様と私』あらすじ
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王子や王女の教育係として、シャム王の宮殿にやってきたイギリス人女性アンナ。
彼女が封建的で前時代的な王宮に、文化と愛情をもたらしていく様を描く。
(出典:http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=3346)
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シャム王国
『王様と私』は1862年のシャム王国が舞台です。
シャム王国とは現在のタイ王国のことであり、1939年まではシャム王国と呼ばれていました。
『王様と私』のモデルは当時の王ラーマ4世です。
彼が実際にイギリスからアンナという家庭教師を招き、子供達に教育させたたことがこの物語になっているのです。
当時のジャム王国の周りの国々はほとんどがイギリスかフランスの植民地となっていました。
そのイギリスの手がシャム王国まで伸びていることを知り、王様は同盟を結ぶか孤立するかで悩んでいたのでした。
この時代アメリカでは南北戦争が行われていました。
奴隷を解放するために戦っていたリンカーン大統領。
その話を知った王様は「奴隷制には反対だ」といっていましたが、自分のやっていることには気がついていないようでした。
奴隷を使い、女性差別を行なっている王様。
そんな王様にアンナは自分自身の方法で、彼の頑な心を溶かしていったのです。
王様という立場上どうしても素直になれない王様でしたが、言い争いながらもアンナとの時間を楽しみ、そして少しずつ考え方が変わっていったのです。
アンクル・トムの小屋
シャム王国にイギリスから大使がやってきて晩餐会が開かれます。
その時に演目として演じられたのがシャム王国版『アンクル・トムの小屋』です。
これはアンナが隣の国ビルマから貢物としてやってきた女性タプティムに渡した本でもありました。
『アンクル・トムの小屋』は奴隷だったトムの人生を描いた物語で、奴隷でしたが雇い主と仲良く暮らしていたトムが、他の農場へ売られてしまい悲しい人生を送ってしまう物語です。
タプティムは愛する人がいながらもシャム王国に送られた自分の人生とトムを重ね合わせ、自分なりの物語として『アンクル・トムの小屋』の物語を脚本します。
王様はその物語を見て不快感を感じていましたが、ゲスト達にはとても評判がよかったのです。
この後タプティムは結局愛する男性と逃げ出しますが、捕まってしまいます。
さらに相手の男性は死んでしまいタプティムには悲しい運命となってしまったのです。
このことがきっかけでアンナはイギリスに帰ることを決意したのでした。
変わらぬ差別
1860年代を描いた『王様と私』。
この時代に起こっていた奴隷の問題や女性差別の問題などを描いている映画でもあります。
そのためにタイでは上映禁止作品にもなっているのです。
物語の中でも語られるようにアメリカでは奴隷解放を巡って南北戦争が起きています。
150年以上も前の時代のことなのに、この映画の内容と現代はそこまで変わっていないと実感してしまいます。
南北戦争は北軍が勝利し奴隷は解放されますが、今だに人種差別は起こっています。
難民問題による差別は激化しているとも言えます。
さらに女性差別も無くなってはいません。
女性が立ち上がり運動も起き変化しつつありますが、まだまだ差別を受けている女性たちはたくさんいます。
『王様と私』は長年愛され続ける作品で、ミュージカルにもなっている作品です。
この作品から学ぶことは多いはずです。
王子がカエルのようにひれ伏すことを中止したように、私たちも時代に合わせて変化しなくてはいけないのです。
まとめ
ミュージカル映画『王様と私』。
『シャル・ウィ・ダンス』の曲に合わせて王様とアンナが踊るシーンは有名です。
ダンスのイメージが強い作品ですが、実は差別のことを描いている作品でもあるのです。
王様がアンナの優しさと愛で変わっていったように、私たちも愛を通じて変わることができるのです。
現代にも通じるとても深いテーマの作品が『王様と私』です。