人間だけが持つ心の闇。それは誰もが持っているものでしたが、バケモノの熊徹に育てられた九太はその闇にのまれることなく成長していました。しかしある日九太は再び人間世界に足を踏み入れたことで、彼の心の中の「闇」が広がっていくのです。自分の中の闇と向き合い必死でもがく九太。そんな彼を救ったのは九太と共に成長したダメ師匠熊徹でした。
『バケモノの子』作品情報
タイトル | バケモノの子 |
監督 | 細田守 |
公開 | 2015年7月11日 |
製作国 | 日本 |
時間 | 1時間59分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
(引用:MIHOシネマ)
『白鯨』
9歳の時にバケモノの世界に迷い込んだ蓮。
彼はそこで九太と呼ばれながら、熊徹の元で修行を重ね強くなることを目指しました。
やがて17歳となった九太は、ある日再び人間世界に足を踏み入れることに。
まず最初に九太が向かったのは図書館でした。
そして彼はそこであのアメリカ文学の傑作とされるハーマン・メルヴィルの『白鯨』を手にとり読み始めました。
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白鯨 上 (岩波文庫)[/col3] [col3]
白鯨 中 (岩波文庫)[/col3] [col3]
白鯨 下 (岩波文庫 赤 308-3)[/col3] [/colwrap]
幼い頃も子供版の『白いクジラ』を読んでいた九太。
彼はこの本に惹かれものがあったのかもしれません。
しかし9歳の時以来、勉強していない九太には難しくて『白鯨』を読むことができません。
そんな彼を助けてくれたのが楓。
彼は楓と共に勉強しそして『白鯨』を読みながら成長していきました。
『白鯨』は鯨に片足を奪われた捕鯨船の船長エイハブが、自分の足を奪った鯨への復讐に執着していくという物語です。
この本を読みながら楓は九太に「主人公は自分の片足を奪った憎い鯨に復讐しようとしている。でも実は主人公は自分自身と戦っているんじゃないかな」と言います。
楓は「鯨は自分を写す鏡」と九太に伝えました。
楓や九太も自分自身と戦っていました。
楓は親のために生きている自分、そして九太は父親に捨てられた自分。
船長にとってのクジラは、彼らにとって親だったのです。
彼らは親に対して憎しみを抱き、いつか見返そうと思っていました。
そしてそれがやがて九太の心の中の闇となっていったのです。
心の闇
バケモノは持っていない人間だけが持っている心の闇。
それは復讐や嫉妬や憎しみが生み出す闇でした。
九太は父親への憎しみが心の闇となっていましたが、一方もう1人心の闇を広げていたのが一郎彦でした。
彼もまた人間でしたが、九太と同じようにバケモノに育てられた子供。
彼はバケモノになることを待ち続けていましたが、彼には長い鼻も牙も生えてこずやがてそれが執着となり心の中の闇を広げたのです。
一郎彦にとっての鯨は「人間」でした。
だから人間である九太を憎んだのです。
そして闇に取り込まれてしまった一郎彦。
九太はそんな一郎彦と闘いますが、歯が立たない相手でした。
しかしそんな九太を救ったのが、彼の師匠熊徹でした。
1人で育ち自由に生きてきた熊徹でしたが、九太と暮らすことで彼もまた成長していました。
そして誰かと共に生きることを知ったのです。
1人でダメなら2人で戦う。
そう決めた熊徹は、付喪神に転生しそして大太刀に姿を変えました。
付喪神とは作られてから100年年以上経った道具に宿る神のことです。
熊徹はこの付喪神に転生しそして彼が長年使ってきた太刀に姿を変え、九太の胸の中に入りました。
彼は九太郎の胸の剣になったのです。
そして2人で闇にのみ込まれた一郎彦を倒したのです。
共に孤独に生きてきた熊徹と九太郎。
しかし彼らは師弟として一緒に過ごしたことで、一人じゃない強さを学びそして強くなったのでした。
彼らにとっての強さ、それは一人ではないということなのです。
まとめ
バケモノに育てられた九太、そして九太を育てた熊徹。
かたや親に捨てられ、もう一方は師匠も親もいない孤独な生き方をしていました。
しかし2人はぶつかり合いながらも共に暮らしたことで、やがて真の強さを身につけていきます。
そして「闇」を倒すために、心身ともに1つになったのでした。