2016年6月23日に行われたイギリスのEU残留・離脱を問う国民選挙。結果は離脱派の勝利に終わりイギリスはEUを離脱することが決定しました。国民選挙に向けてどちらの派閥も公式団体を作り政治キャンペーンを行いました。その中で離脱派「ボート・リーブ」の指揮をとったドミニク・カミングス。彼がとった新しい手法、それはとても脅威を感じさせるものでした。
『ブレグジット EU離脱』作品情報
タイトル | ブレグジット EU離脱(Brexit: The Uncivil War) |
監督 | トビー・ヘインズ |
公開 | 2019年3月31日 |
製作国 | イギリス |
時間 | 1時間32分 |
Rotten Tomatoes
あらすじ
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2016年。
政治戦略家ドミニク・カミングスは、EU離脱国民投票に向けて、イギリス独立党のロビイストから離脱派の選挙参謀になるよう依頼される。
依頼を受けた彼は、データアナリストの協力のもと、高度なアルゴリズムを使い、相手陣営も知らない有権者でありながら投票したことのない人々「存在しないはずの300万人」を得票のターゲットに絞り込む。
そしてソーシャルメディアで離脱を訴えるキャンペーンを始めるのだが…。
(出典:https://www.star-ch.jp/channel/detail.php?movie_id=27631)
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EU離脱・残留
イギリスで起ったEU離脱・残留問題。
それは国民投票に委ねられることになりました。
1993年に誕生したEU(欧州連合)。
ヨーロッパの平和と安全や繁栄を目指すために作られました。
しかしやがてイギリスにとってEUに加盟することが正しいのかどうかという問題を引き起こしまし。
EU離脱を考えるようになった理由の1つに移民問題があります。
『ブレグジット EU離脱』の中で描かれているように、イギリスに大量の移民がやってきてイギリス人の仕事が奪われてしまったと考えてるようになったのです。
そしてもしトルコがEUに加盟すればさらなる移民がイギリスにやってくることになります。
それを懸念した人達はEU離脱を考えるようになりました。
さらにEU加盟国はEUのルールに従うことになり、イギリス独自で動くことができません。
それに対して「主導権を取り戻そう」と訴えたのが離脱派でした。
さらに離脱派は加盟国がEUに支払うEU分担金。
それを国民保険制度(NHS)に回そうと訴えました。
彼らは週3億5000万ポンドのお金を払っていると訴えましたが、それは事実ではなかったのです。
一方、残留派は雇用と経済をメインにキャンペーンを行いました。
IMFも世界銀行も残留を支持し、イギリスがEUを離脱すると経済危機が訪れると訴えたのです。
残留派も離脱派もお互いの恐怖を煽ります。
やがてこれは憎悪へとかわり、国民を分断することになってしまいました。
EU離脱・残留問題が、イギリス国内を混乱に陥れてしまったのでした。
新しい選挙手法
離脱派「ボート・リーブ」の指揮をとったドミニク・カミングス。
彼はEU離脱・残留の国民投票のキャンペーンの中で、選挙に勝つために新たな戦い方を作りました。
それはターゲティング広告です。
SNSで集めた個人情報により有権者の思考や行動を予測します。
そしてそれぞれの有権者にあった広告を送ったのです。
その数はなんと10億本に上ります。
また同じく離脱派の「リーブEU」でも有権者にターゲティング広告を送っていました。
広告を送るために使われたのがSNSです。
彼らはSNSの投稿だけでなく「いいね」や「シェア」を使って、どの広告が有効だったかを測定します。
そしてリアルタイムで広告を改良し、有権者に送ったのでした。
SNSのタイムライン は人それぞれ違います。
「ボート・リーブ」が送った広告は彼らのターゲットにしか表示されません。
他のユーザーには表示されないのです。
「ボート・リーブ」のターゲットは、選挙に投票するために有権者投票をしてない人でした。
そのためマスコミなどに取り扱われることなく、広告を送り続けることができたのです。
そしてそれが有権者を誘導することにもつながったのでした。
まとめ
2016年にイギリスで行われた国民投票の裏側を描いた『ブレグジット EU離脱』。
その恐るべき手法は、現在も問題となっていて民主主義の破壊へも繋がります。
さらにこの国民投票により、イギリスでは大きな分断を生むことにもなりました。
国民投票がもたらした結果。
それはEU離脱ということだけではなかったのです。