1933年に日本では『暗黒街の顔役』として公開された映画はリメイクされ『スカーフェイス』として1984年に公開されました。どちらも組織の下っ端だったトニーがのしあがっていく姿を描いた作品ですが、2つの作品にはそれぞれ当時アメリカ政府が抱えていた問題が反映されていました。ここではそんな2つの作品を比較してみます。
『暗黒街の顔役』と『スカーフェイス』
『暗黒街の顔役』
タイトル | 暗黒街の顔役(Scarface) |
監督 | ハワード・ホークス |
公開 | 1933年3月13日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 1時間33分 |
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『スカーフェイス』
タイトル | スカーフェイス(Scarface) |
監督 | ブライアン・デ・パルマ |
公開 | 1984年4月28日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 2時間50分 |
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映画『スカーフェイス』の最後には「ハワード・ホークスとベン・ヘクトに捧げる」と字幕が出てオリジナル作品の監督と脚本家に敬意を表しています。
共通点
基本的な話の流れは2作品とも同じで、リメイク作品の方はオリジナルと同じような物語になっていました。
[box class=”pink_box” title=””]・主人公は顔に傷のあるトニー
(『スカーフェイス』トニーの本名はアントニオ・モンタナ)
・他の土地から移ってきて組織の下っ端からのしあがる
・ボスの女を好きになる
・妹を溺愛する
・妹は兄トニーの部下とできてしまう[/box]
なかでもトニーが1人でいるときに襲われその犯人を突き止めるという一連のシーンは、電話をかけさせる展開などほとんどが同じになっていました。
それだけでも『スカーフェイス』の監督であるブライアン・デ・パルマは、オリジナル作品を尊重していてオマージュしていることを感じることができます。
さらにオリジナルの中でトニーを象徴する言葉でもあった「世界は君のもの」という言葉もリメイク作品に登場します。
その言葉はどちらの作品でもビジネスを拡大し組織の中で上までのしあがろうとするトニーの姿にぴったりの言葉でしたが、それと同時にトップまで上り詰めた後のトニーの未来を暗示する言葉になっていました。
相違点
ほとんどが同じような流れの『暗黒街の顔役』と『スカーフェイス』ですが、大きく違う点もありました。
ビジネス
『暗黒街の顔役』でトニーが行っていたビジネスはお酒の密売でしたが、『スカーフェイス』では麻薬の密売になっいてました。
ただそのビジネスはどちらも当時アメリカ国内を悩ませていた大きな問題です。
『暗黒街の顔役』が製作された1930年代初頭は1920年代から続く禁酒法によって、ギャングがお酒の密売で勢力を拡大していました。
『暗黒街の顔役』で描かれるトニーは当時実在したアル・カポネがモデルになっています。
カポネのいたシカゴはギャングに牛耳られてしまっていて、市民は恐怖に怯えながら過ごしていました。
そんな当時の状況をリアルタイムで描き、ギャング問題に無関心な政府に対する批判として『暗黒街の顔役』は作られました。
一方『スカーフェイス』がアメリカでは1983年に公開され舞台はマイアミになっていましたが、1980年代当時マイアミはコロンビアなど南米から入ってくる麻薬が流通していて、市民にまで麻薬が蔓延している状態でした。
こちらも当時マイアミで起きていた問題をリアルに描いた作品なのです。
相違点として「お酒」と「麻薬」をあげましたが、どちらも市民を巻き込み苦しめている問題をリアルタイムで扱っているという点では、その2つは共通点とも言えます。
ラスト
『暗黒街の顔役』と『スカーフェイス』で大きく違う点といえば、ラストシーンです。
『スカーフェイス』のラストシーンは映画史に残る印象的な終わり方の1つと言われています。
途中まで同じだった物語はトニーが成功してからの流れが2つの作品では変わっていきます。
特に『スカーフェイス』では何もかも手に入れたトニーが孤独になっていく様子が映し出されていました。
また『暗黒街の顔役』のラストではトニーは警察に包囲されてしまいますが、『スカーフェイス』ではマフィアに包囲され激しい銃撃戦が繰り広げられます。
そしてそこで迎えるトニーの最後は、強烈で一度見たら忘れられないほど印象に残るシーンです。
このラストシーンが『スカーフェイス』の中で最も有名なシーンですが、そこに映る「世界は君のもの」という言葉の虚しさと重なって衝撃的なイメージを残す作品になっていました。
まとめ
『暗黒街の顔役』とそれをリメイクした『スカーフェイス』を比べてみましたが、どちらも当時起きていた問題を作品の中で扱っているという点で、現実的な映画になっていました。
『スカーフェイス』は『暗黒街の顔役』という作品に対する愛を随所に散りばめた作品になっていましたが、ラストシーンは元の作品にはないオリジナリティの展開になっています。
それが『スカーフェイス』という作品の強烈なイメージになっているのではないかなと感じました。
2つの作品の間には50年という時間がありますが、2つの作品の根底には同じものを感じることができると思います。