アカデミー賞で7部門受賞した名作『我等の生涯の最良の年』。第二次世界大戦から故郷に戻ってきた3人の男性が社会復帰する苦悩を描いた物語ですが、それは監督のウィリアム・ワイラー自身の体験と重ねられていました。
『我等の生涯の最良の年』作品情報
タイトル | 我等の生涯の最良の年(The Best Years of Our Lives) |
監督 | ウィリアム・ワイラー |
公開 | 1946年11月21日(アメリカ)1948年6月15日(日本) |
製作国 | アメリカ |
時間 | 2時間50分 |
[box class=”red_box” title=”アカデミー賞受賞”]・作品賞
・監督賞:ウィリアム・ワイラー
・主演男優賞:フレドリック・マーチ
・助演男優賞:ハロルド・ラッセル
・脚色賞
・編集賞
・音楽賞[/box]
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ウィリアム・ワイラー
アカデミー賞の作品賞や監督賞に何度もノミネートされ常連だったウィリアム・ワイラー監督は、アメリカで1942年に公開された『ミニヴァー夫人』で念願のオスカーを受賞しました。
『ミニヴァー夫人』はウィリアム・ワイラー監督が、映画監督としての使命を追求した結果作られた作品でもありました。
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ミニヴァー夫人 (字幕版)
ウィリアム・ワイラーは自身の『ミニヴァー夫人』がオスカーを獲得したことを知ったのは、イギリスにいる時でした。
彼は陸軍の指示で「戦意高揚映画」(プロパガンダ映画)を作るためにイギリスに派遣されていたのです。
当時ハリウッドは監督が陸軍からプロパガンダ映画を作るよう説得され、多くの有名監督が戦地に赴き撮影を行っていました。
ウィリアム・ワイラーもその1人で彼はイギリスで爆撃機メンフィス・ベルを撮影しています。
実際に爆撃機B17に乗り込み撮影を行なったワイラーは、撃墜によるカメラマンの死亡という悲しい出来事も経験しました。
そんな危険と隣り合わせで製作したドキュメンタリー映画『メンフィス・ベル』はヒットし、その後続編に当たる『サンダーボルト』に取り掛かります。
ワイラーは今度はB25に乗り込み撮影を行いますが、機内の騒音によって彼は聴力を失ってしまいました。
これにより彼は負傷兵となり軍を除隊になります。
この時ワイラーは2度と映画が作れなくなったと悟ったそうです。
そのワイラーが戦後作った映画が『我等の生涯の最良の年』です。
片耳のわずかな聴力と音声増幅器を使って俳優たちの声を聞き取りながら、彼は自分の経験を作品にしようと映画監督として再び立ち上がりました。
のちにウィリアム・ワイラーは『我等の生涯の最良の年』は特別な思い入れのある作品だと語っています。
戦地での経験や帰国してからの生活など映画『我等の生涯の最良の年』は、ウィリアム・ワイラー監督自身の経験が元になって作られた作品だったのです。
帰還兵への思い
『我等の生涯の最良の年』は空軍大尉のフレディ 軍曹のアル 水兵のホーマーの3人の帰還兵が苦労しながら社会復帰していく物語です。
彼らは待ち望んだ故郷にやっと帰ることができますが、なかなか街や生活に馴染むことができません。
戦争で両腕を失ってしまったホーマー、戦地での悪夢を見るフレディ、戻ってきてからお酒を手放せないアル。
3人とも肉体だけでなく心にも大きな傷を負っていました。
それはまさしく監督ウィリアム・ワイラーの傷でもありました。
ワイラーはこの作品を製作するにあたって、「帰還兵が抱える問題を取材する必要はなかった。なぜならそれは私も彼らの仲間で同じ気持ちだったからだ」と言っています。
彼がこの作品を作ろうと思ったのは、帰還兵が抱える問題にクローズアップすることで彼らに対する理解を社会に求めたからでした。
映画『我等の生涯の最良の年』は1946年11月に公開されると大ヒット映画となり、当時史上2番目の興行成績を記録しました。
ワイラーは「当時の社会に貢献できたから、この作品を作ってよかった。」と語っていますが、帰還後彼と同じように傷ついた多くの帰還兵を見たことが、映画界への復帰につながりそして名作『我等の生涯の最良の年』が誕生したのです。
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まとめ
ウィリアム・ワイラー監督自身の経験、そして彼が負った心の傷を元に製作された映画『我等の生涯の最良の年』は、当時の社会の状況などがリアルに描かれいる作品でもあります。
帰還兵の抱える問題それに対する社会の状況など、この作品を通して監督はたくさんのメッセージを観客に伝えました。
そしてその想いは多くの人に届き、当時の興行成績やアカデミー賞などで結果を残すことになりました。
さらに『我等の生涯の最良の年』は最高傑作として今もなお多くの人に愛される作品となっているのです。
参考資料:伝説の映画監督 -ハリウッドと第二次世界大戦-