NHKスペシャル『メルトダウンZERO 原発事故は防げなかったのか ~見過ごされた“分岐点”~』なぜ津波対策は見過ごされてしまったのか


2011年3月11日。福島県沖を襲った地震により発生した津波。その津波によって福島第一原子力発電所は電源を完全に喪失してしまいメルトダウンを起こしてしまいました。メルトダウンを防ぐことはできなかったのか?見逃されてしまった数々のチャンスが浮き彫りになってきました。

@NHK

メルトダウンZERO 原発事故は防げなかったのか ~見過ごされた“分岐点”~

東京電力福島第一原子力発電所で起きた史上最悪レベルの原発事故を、独自に検証してきたメルトダウンシリーズ。

今回は311までの数年間、関係者の間で、津波対策についてどのような議論が行われていたのかを徹底取材し、事故に至る道のりを検証する。

1000ページを超える国や電力会社の内部文書を入手、さらにおよそ100人の関係者を取材、浮かび上がってきたのは事故に至るまでの複数の重大な「分岐点」だ.

(出典:https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20200315)

2つのチャンス

新研究による巨大津波

地震の発生確率を予測する長期評価によると、東北などの日本海側ではいつM8クラスの巨大地震が起きてもおかしくないという報告が上がっていました。

この報告を受けて今後の対応をどうするか電力会社4社が集まり話し合いが行われてます。
この会合の中で「根拠が弱い」ということを理由に対策をしないという会社が出る中、東京電力は「最大限の対策が必要である」という考えを示していました。

東京電力内でも15m級の津波が発生する恐れがあるとして、非常用海水ポンプの機能維持や建屋の防水性の向上などの対策が進められることになっていました。

しかし2007年7月東京電力は柏崎刈羽原発を全機停止という事態に直面していました。
これを受けて福島への対策にかかる費用などが見直され、対策を行わないことに方向転換してしまったのです。

さらに電力会社のリーダー的存在である東京電力は、他社へ足並みを合わせるように連絡をします。

これによって最初の津波対策は見過ごされてしまうことになってしまったのです。

しかし日本原電の東海第二原発では盛土を行ったり建屋の防水など、津波への対策をとっていました。
ただし「足並みをそろえる」ため、長期評価による津波対策とは公表しませんでした。

貞観津波

「長期評価」の後にもう1つ過去に東北を襲った巨大津波の最新の研究結果が報告されます。
それは869年に起きた貞観津波の研究でした。
この研究によって宮城県沖でM8クラスの地震が起きていた可能性が示されたのです。

東京電力はこの研究結果を安全性の評価の中に入れませんでした。
安全性の評価とは国が設けたバックチェックで、この報告により国は原発の稼働を決定します。

一方で、東北電力の女川原発のバックチェック報告書の中には貞観津波が報告されていました。
これを知った東京電力は、歩調を合わせて欲しいと東北電力に連絡を入れています。
最終的に東北電力はバックチェック報告書に、「参考」という位置づけで貞観津波を記載しました。
(他のものには「参考」とは記載されていません)

これで2つ目の津波対策のチャンスは失われてしまったのです。

原子力安全・保安院

バックチェックを行う国の機関は当時は原子力安全・保安院が行っていました。
原発を規制する組織でしたが、原発を推進する経済産業省の組織です。

保安院に上がってくるバックチェックには、中間報告と最終報告があります。
耐震などの緊急性の高いものが中間報告され、津波は最終報告の案件でした。

保安院は貞観津波のことを東京電力に問いますが、最終報告での報告とされます。
しかしその起源は電力会社の判断とされていました。

当時柏崎刈羽原発の対応に追われていた東京電力は明確な最終期限を示しませんでした。
そしてそれを保安院は了承していたのです。

緊急性のないものとして津波対策は先送りにされてしまいました。

事故の後、原子力安全・保安院は解体しました。
現在は経済産業省から独立した、原子力規制委員会が原発に対する厳しいチェックを行っています。

自治体

福島県側も国に対して安全性の報告を要望していました。
本来であれば自治体が安全性に関して要望することはありませんが、当時福島第一原子力発電所の3号機ではプルサーマル発電が行われようとしていました。

特殊な核燃料を使うもので、福島県側は耐震安全の確認を求めたのです。

これに対して国は福島県側に「中間報告まででいいか」と聞いています。
県側も貞観津波のことを知っていましたが、「国の方で進めるのであれば進めてください」と返事をしました。

実はプルサーマル発電が始まることで新たに7・8号機の増設が予定されていました。
増設されれば、自治体に交付金が入りさらに巨額の収入も見込めます。

結局、地震に対する安全性だけを確認し、津波は検討されなかったのです。

まとめ

何度も津波対策を行うチャンスがありながら、見過ごされてしまい最終的にメルトダウンを起こしてしまいました。

各機関がそれぞれの事情だけを考えた結果が、大事故に繋がってしまったのです。
防げていたかもしれないメルトダウン。

今後どうやって不確かな自然災害などのリスクと向き合っていくのかという、課題が浮き彫りになりました。