映画『ドリーム』で見るアメリカの宇宙開発の始まりと1960年代の差別


ソ連に先を越されてしまった宇宙開発において、アメリカが初の有人飛行を成功させさらに地球周回軌道を成功させるまでのNASAの様子が描かれた『ドリーム』。成功の裏には才能ある黒人女性達がいたこと、そして当時彼女達は人種と性別の二重の差別と戦っていたことが分かる映画です。

『ドリーム』作品情報


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タイトル ドリーム(Hidden Figures)
監督 セオドア・メルフィ
公開 2017年9月29日
製作国 アメリカ
時間 2時間07分

Rotten Tomatoes

あらすじ

1961年、アメリカはソ連との熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていた。

NASAのラングレー研究所には、ロケットの打ち上げに欠かせない“計算”を行う優秀な黒人女性たちのグループがあった。

そのひとり、天才的な数学者キャサリンは宇宙特別研究本部のメンバーに配属されるが、そこは白人男性ばかりの職場で劣悪な環境だった。

仲の良い同僚で、管理職への昇進を願うドロシー、エンジニアを目指すメアリーも、理不尽な障害にキャリアアップを阻まれていた。

それでも仕事と家庭を両立させ夢を追い続けた3人は、国家的な一大プロジェクトに貢献するため自らの手で新たな扉を開いていくのだった……。

(出典:http://www.foxmovies-jp.com/dreammovie/)

アメリカとソ連の宇宙開発の戦い

アメリカとソ連の冷戦時代が続く中、二つの大国は宇宙開発においても熾烈な戦いを繰り広げていました。

1957年10月4日ソ連は世界で初めて人工衛星を地球周回軌道に打ち上げることに成功しました。
冷戦状態の最中、この出来事はアメリカを脅威に陥れたのです。
「ソ連が人工衛星を使い、アメリカに攻撃をしてくる」そんな噂がアメリカ国内を駆け巡りました。

『ドリーム』の冒頭で警察官が空を見上げながら「スプートニクが」と言ったのは、ソ連のロケットの名前のことを指してします。

そこから始まったアメリカとソ連の宇宙開発競争。
アメリカも必死でロケットの打ち上げを行いますが、失敗続きで国全体が不安になっていました。

それに追い打ちをかけるかのように1961年4月12日、ソ連のガガーリンが人類初の有人飛行に成功します。

この出来事はさらにNASAで働く職員達に焦りを感じさせることになり、またアメリカの国民を不安を与えることになったのでした。

マーキュリー計画

ソ連の宇宙開発に対抗してアメリカが行った宇宙開発が「マーキュリー計画」です。
映画『ドリーム』ではこのマーキュリー計画に関わった黒人女性の活躍が描かれていました。

マーキュリー計画とはアメリカの初の有人宇宙飛行計画のことです。
この計画に携わりロケットに乗るために選ばれた7人はは「マーキュリー7」と呼ばれ、彼らはアメリカの希望でもありました。

ガガーリンに遅れること1ヶ月後、1961年5月5日アメリカで最初の有人宇宙飛行が行われます。
アラン・シャパードはアメリカ人初の有人飛行に成功した人物となりました
しかしガガーリンが108分間の宇宙飛行をしたのに対し、シェパードは15分でした。
続いてガス・グリソムも宇宙飛行を成功させますが、地球の周回なくシェパードとほぼ同じ、15分の宇宙飛行でした。

しかもグリソムの着水後、宇宙船のハッチが開いてしまうというトラブルが起きてしまいます。
命の危険が露呈され、またトラブルのために宇宙船は浸水し海に沈んでしまいNASAは莫大なお金をかけた宇宙船を失うことになってしまいました。

何としてもソ連に追いつきたいアメリカが、初の地球周回軌道に乗ることに成功したのは1962年2月20日でした。
ジョン・グレンはアメリカで初めて地球周回軌道に成功した宇宙飛行士となりました。

『ドリーム』では、黒人女性達の戦いと活躍を描きながら、グレンが成功するまでのマーキュリー計画の歴史も描いていました。

人種差別と女性差別の戦い

1961年のアメリカでは黒人達の公民権運動が高まり、人種差別撤廃運動が盛んになっていました。

特に『ドリーム』の舞台であるアメリカ南部のバージニア州では、差別が根強く残っていました。

・トイレ
・バスの席
・水飲み場
・図書館
・学校
など様々なものが白人と非白人とに分けられていました。

しかも1960年代前半は女性解放運動が怒った時代でもあり、女性に対する差別もありました。
『ドリーム』の中でキャサリンが会議に参加できないのも女性だったからです。

『ドリーム』で描かれる彼女達は、人種と性別という二重の差別と戦いながら、自分の権利を勝ち取っていったのです。

白人学校に通いたいメアリーが裁判所に嘆願書を出しに行きますが、裁判官に「バージニア州が法律だ」と言われていまします。

当時のケネディ大統領は人種隔離を行うジム・クロウ法を禁止する法案を提出していましたが、このセリフは「政府や最高裁は関係ない」ことを意味していました。

それでもどんな差別を受けようとも、頭の良かったキャサリン、メアリー、ドロシーはそれぞれの方法で自分の夢を叶え地位を手にしていきました。

彼女達の戦いは壮絶なものだったはずですが、彼女達の戦いは人種差撤廃だけでなく女性の地位確立やNASAの発展にも繋がっているのです。

学びポイント

アメリカの歴史において多くの歴史的事件が怒った1960年代。

『ドリーム』では1961年〜1962年のNASAのマーキュリー計画を描き、またその裏で活躍した女性達の戦いを描いていました。

宇宙飛行の歴史の一部を見ることができる映画でもありますが、それと同時に当時アメリカの国内で起こっていた人種差別を目の当たりにする映画でもあります。

日常の中に普通にあった人種差別。
この映画ではその事実に直面することになるでしょう。