『007』シリーズ10作品目となる『007 私を愛したスパイ』は、今までと似たような物語でもありながら全く違う作品となりました。「007スタジオ」と言うスタジオまで作ってしまった今作では、豪華なセットと新たなストーリーで魅力的な007の世界観を作り出していたのです。
『007 私を愛したスパイ』作品情報
タイトル | 007 私を愛したスパイ(The Spy Who Loved Me) |
監督 | ルイス・ギルバート |
公開 | 1977年12月24日 |
製作国 | イギリス/アメリカ |
時間 | 2時間05分 |
あらすじ
(引用:MIHOシネマ)
新しい007のストーリー
巨大タンカーが潜水艦をのみこんだり、エジプトから列車で移動するジェームズ・ボンドとボンドガール。
これだけ聞くと今までの007シリーズを思い出してしまうのが、シリーズ10作品目の『007 私を愛したスパイ』です。
『007は二度死ぬ』ではアメリカとソ連のロケットが、謎の飛行物体に飲み込まれてしまいます。
『007 ロシアより愛を込めて』では、オリエント急行に乗ってボンドはボンドガールと移動します。
過去シリーズと似たような作品だと思われがちですが、実は『007 私を愛したスパイ』では新しい試みをいくつも行っていたのです。
オープニング
それはオープニングから始まります。
ソ連の諜報員からスキーで逃げるボンドは、途中で岩場からの壮大なジャンプを見せてくれます。
もちろんこれはスタントマンによるアクションですが、命懸けのオープニングは一気に観客の心を掴みました。
ジャンプしたボンドの背中からパラシュートが開きイギリス国旗が現れた時は、観客は拍手をしながら喜んだそうです。
さらに、その後モーリス・ビンダーの作るオープニングクレジットが始まりますが、ここでも初めての出来事が起こります。
それまで007シリーズのオープニングは踊る裸の女性がメインでしたが、この作品で初めてジェームズ・ボンドがオープンニング曲に登場したのです。
ボンド・ガール
007シリーズと言えば毎回登場するボンド・ガールも話題の1つです。
もちろんこの作品でもボンドガールは登場しますが、シリーズ通じて初めてジェームズ・ボンドとボンドガールが対等に描かれます。
『007 私を愛したスパイ』に登場したボンドガールはKGBの諜報員のアニヤ。
彼女はボンドと同じ諜報員で2人の立場は対等なんです。
Mとゴゴール将軍の前で知識を見せるアニヤに対抗して、ボンドも自分の知識をひけらかすシーンもありました。
また、アニヤの運転に対してボンドが「女の運転だ」と蔑視的な発言をすると、アニヤは車をバックさせ敵の大男を潰し「これが女の運転よ」と言い返していました。
今までにないボンドとボンドガールの関係を楽しめる作品になっています。
敵の大男
007シリーズに出てくる敵の用心棒を大男で強靭の肉体を持っていることが多いです。
『007 私を愛したスパイ』にも大男で鉄の歯を持っているジョーズが登場します。
その歯は鎖を噛みちぎり、サメを噛み殺すほどの威力を持っています。
そんな恐ろしいジョーズですが、お茶目な一面もあって憎めない存在です。
愛着を感じてしまう敵キャラも今までの007シリーズにはいませんでした。
この作品でみんなに愛されたジョーズは、次の作品『007 ムーンレイカー』にも登場することになります。
ブロフェルド以外で敵のキャラクターが、ボンドに倒されなかったのもこの作品が初めてでした。
壮大なストーリー007
各作品ごと色んな都市に行くのがジェームズ・ボンドですが、今回ボンドはエジプトに向かいます。
ピラミッドやスフィンクスなどの歴史的な建造物も登場したり、ラクダに乗るボンドや砂漠の中を歩くボンドとボンドガールなども描かれます。
ちなみにボンドとボンドガールが砂漠の中を歩くシーンでは、映画『アラビアのロレンス』の曲がかかりオマージュを捧げていました。
その後、Qがボンドのために用意していた車はロータス・エスプリ。
たくさんの仕掛けがあるロータスでしたが、1番の見せ場は海にダイブしたロータスが潜水艇に変わるシーンです。
『007 私を愛したスパイ』と言えば、このシーンを思い出す人も多いはずです。
この車をデザインしたのは長年007シリーズの美術監督を務めてきたケン・アダムですが、彼はこの作品で巨大なセットを作ることになります。
その名も「007スタジオ」と呼ばれるスタジオは、潜水艦が3隻も入る大きさのスタジオです。
そこにタンカー内部のセットを作り撮影を行いました。
今までの作品の中で1番巨大なセットで、タンカー内部での大人数の迫力あるアクションシーンや爆発シーンが作られたのです。
ちなみに敵のストロンバーグのアジトもケン・アダムのデザインです。
>>>007シリーズの世界を作ったケン・アダムについてはこちら
まとめ
スキー場に潜水艦にタンカーにとかなり大掛かりな作品になっていた『007 私を愛したスパイ』。
華麗なセットはもちろんQのスパイグッズまで、今までにないスケールになっていました。
また新しい要素を色んなところに取り入れ、新鮮さを与えてくれる作品でもありました。
どんどん進化し続ける物語、それが007シリーズなのです。
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参考資料:DVD『007 私を愛したスパイ』