スティーヴン・スピルバーグ監督、トム・クルーズが主演を務めた『宇宙戦争』。子供の扱い方が全くわからないダメ父親が、ある日全世界で起きた地球外生命体による攻撃によって子供を守ることになってしまいます。子供達を母親の元に返すために必死で逃げ続ける中、危険を乗り越えるたびに父親としての自覚を持つようになる主人公。そんな父親の成長物語が2005年の『宇宙戦争』です。
『宇宙戦争』(2005)作品情報
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タイトル | 宇宙戦争(War of the Worlds) |
監督 | スティーヴン・スピルバーグ |
公開 | 2005年6月29日 |
製作国 | アメリカ |
時間 | 1時間56分 |
Rotten Tomatoes

あらすじ
(引用:MIHOシネマ)
ダメ父親から本当の父親へ
『宇宙戦争』の主人公レイを演じたトム・クルーズ。
いつもはかっこよくて強い役が多いトムでしたが、この『宇宙戦争』では全く今までの役とは違うダメな父親を演じています。
離婚していますが、妻に愛想をつかされた理由がわかるほど自己中な人物です。
子供を預かる時間を間違えただけでなく、子供が家にきても全く面倒をみる気がありません。
息子に対しては本気でキャッチボールをするなど、男として対抗心を燃やすほどです。
また娘の生まれつきのアレルギーも忘れています。
そんなダメ父親ですから、子供達も父親に冷たいです。
それでも突然地球外生命体によって攻撃されたら、父親として子供達を守るしかありません。
恐怖のあまりパニックになった娘は母親を求めます。
正義感に燃える息子は、地球外生命体と戦うと言い出します。
子供達を連れて母親のいるボストンを目指すレイは、何度も子供達と衝突しながらやっと父親としての自覚を持ち始めました。
最初は逃げることだけしか考えなかったレイでしたが、いつしか子供を守るために必死で戦い始めます。
その戦いは地球外生命体ではなく、人間との戦いでした。
子供のために犠牲を払うことを経験したレイ。
いつしか立派な父親になっていました。
そしてまた娘のレイチェルは、自分のために必死で戦う父親の姿を1番近くで見ていました。
父親に抱かれることさえ嫌がっていたレイチェルでしたが、最後は必死で父親にしがみついていました。
地球外生命体からの攻撃という非日常的なことを経験し、また必死で生き抜く間に父と娘は親子になることが出来ました。
『宇宙戦争』は弱々しいいトム・クルーズを見ることができる珍しい作品でもありますが、父親として成長する一人の男の物語になっていました。
パニックで見える人間の心理
『宇宙戦争』はダメ父親の成長物語と同時に、パニックに陥ったときの悲しい人間の心理状況が描かれていました。
レイ達家族の乗った車を襲う群集。
自分が車に乗るためなら子供にすら容赦ありません。
また自分が生き残るためなら平気で銃を撃ってしまう姿は、人間の奥底にある心理が描かれているように感じてしまいました。
さらにまだ人が乗れる状態でも、トライポットに襲われ始めると出発してしまったフェリー。
これもまた自分さえ良ければという、人間のエゴが描かれています。
そんな中、人を助けトライポットと戦おうとする息子のロビー。
彼の行動はこの作品の中では人間の希望のようにも見えます。
『宇宙戦争』では地球外生命体による攻撃されましたが、いつ何が起きてもおかしくない世の中です。
災害やテロなど常に危険の中で暮らしています。
そんな時人間は協力しあって生きていけるのか。
この映画の中で描かれたことが事実でなければいいなと感じてしまいました。
まとめ
SF映画でありながら、父親の成長物語と人間の生きる欲望を描いた作品が『宇宙戦争』でした。
パニックに陥った時、家族のために立ち上がる父親。
その時初めてレイは父親となりました。
その父親の姿が自分だけ良ければというエゴにまみれた人間の中で、希望でもありました。
だからこそ中ラストは希望を感じることのできる終わり方になっていたと思います。
ラストの説明のように「無駄に終わる人間の生と死はない」という世界になることを願います。